サイバー攻撃を受けない企業って今あるの? 無差別攻撃の脅威と対策                          
             
           
レポート

サイバー攻撃を受けない企業って今あるの? 無差別攻撃の脅威と対策

相手は誰でも良いという無差別攻撃の脅威から会社をどう守るのか。今取るべき対策について解説します。


 

 

                                             

1. 実態を把握していますか?

「うちは中小企業だから、サイバー攻撃とは無縁だろう」――そう思っていませんか?
まず一度、こんな問いを自社に投げかけてみてください。

 

  • 自社は今、サイバー攻撃を受けているのか?
  • 受けているとしたら、どの程度の危険性がある攻撃が、1日に何件発生しているのか?
  • そもそも、それを確認できる仕組みが社内にあるのか?

 

この問いに自信を持って答えられない企業が、実は非常に多いのが現状です。サイバー攻撃の実態が把握できていない状態は、「安全である」ことを意味しません。むしろ、何が起きているかわからない状態であり、それ自体がリスクです。

 

安全かどうかを判断する基準がなければ、対策の必要性も優先度も決められません。まずは、自社のネットワーク上でどのような通信が発生しているかを可視化することが、セキュリティ強化の出発点となります。

 

例えば、Log(ログ)の収集・分析、Firewall(ファイアウォール)の通信記録、IDS(Intrusion Detection System/不正侵入検知システム)やIPS(Intrusion Prevention System/不正侵入防御システム)のアラート確認など、自社の「今」を知ることから始めましょう。こうしたセキュリティシステムが社内に全く無い場合は、今からでも導入を検討しましょう。通信の記録や、攻撃の形跡が記録される仕組み無しで、実態の把握は困難です。

 

                                                                     

      

2. 最新の手口で攻撃されるとは限らない

「生成AIを使ったような最新のサイバー攻撃は高度すぎて、一般企業では対応できない」という声を聞くことがあります。確かに、生成AIを使ったような高度な攻撃は存在します。しかし、企業が日々直面している現実はもう少し複雑です。

実際のサイバー攻撃は、次の2種類が入り混じって行われています。

 

  • 既知の手口:過去に発見・報告済みの攻撃手法。対策情報も公開されており、適切に応すれば防げる可能性が高い。
  • 最新の手口:比較的最近見つかり、対策はあるがまだ世の中に浸透していない、あるいは手口が一般的に知られていない攻撃手法。または対策自体が確立されていない、新たに生み出された攻撃手法(ゼロデイ攻撃)。

 

注目すべきは、既知の手口による攻撃が今も多数発生しているという点です。例えば、既知の脆弱性を悪用した攻撃は、ベンダーがすでにセキュリティパッチを公開しているにもかかわらず、それが適用されていない環境を狙って仕掛けられています。また、ウイルス対策ソフトの定義ファイルが古いまま放置されている場合、既知の ウイルスでさえ検知できないことがあります。

防げるはずの攻撃で被害が生じることは、最も避けるべき事態です。 セキュリティアップデートの適時適用と、ウイルス対策ソフトの定義ファイルの最新化は、基本でありながら最も重要な対策の一つです。

               

                                                            

3. 狙って攻撃してくるとは限らない

サイバー攻撃と聞くと、「特定の大企業や著名な組織が狙われるもの」というイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし、実態はそれだけではありません。

サイバー攻撃は、大きく次の2つに分類できます。

 種別   内容 

標的型攻撃

 特定の企業・組織・個人などを明確に狙った攻撃。時間をかけて用意周到に攻撃計画が練られていたり、特定の相手だからこそ騙されやすいような手口が用いられていたりする。 
無差別型攻撃  相手を選ばず、手当たり次第に仕掛ける攻撃。複数種類の攻撃をまとめて実行される場合があり、昔からある古い手口から、直近1~2か月位の間に見つかった脆弱性を突いた攻撃の手口まで、さまざまなものが混在して不特定多数を相手に実行される。 

今回特に注目したいのが、後者の無差別型攻撃です。無差別型攻撃は、攻撃対象の規模・業種・知名度などを問いません。インターネット上に公開されている IPアドレスを片っ端からスキャンし、既知の攻撃手口を次々と試していく、いわば「数打ちゃ当たる」方式です。相手の環境に脆弱性があるかどうかさえ、最初から確認せずに攻撃を仕掛けることもあります。

つまり、オープンなインターネットを利用しているあらゆる企業が、常にこの無差別攻撃のリスクにさらされているということです。「今まで被害がなかったから大丈夫」というのは安全性の根拠になりません。被害が表面化していないだけで、すでに何らかの攻撃を受けている可能性があり、これから攻撃を受ける可能性もあります。

                                                   

                        

4. セキュリティ強化のハードルを越えるコツ

「基本的な対策が必要なのはわかっている。でも、なかなか手が回らない……」そんな声は、多くの企業、特に中小企業でよく耳にします。その背景には次のような課題があります。

 

  • 人員:専任のセキュリティ担当者がいない、IT担当者が兼務で手一杯
  • 時間:日常業務が忙しく、セキュリティ対応に割ける時間がない

 

では、こうした状況をどう打開するか。一つの視点として、DX(デジタル・トランスフォーメーション)やデジタル化の推進と、セキュリティ対策をセットで進めるという考え方があります。

DXや業務のデジタル化、特にクラウド利用などは、既存の情報セキュリティリスクを大きく変化させ、守るべき領域がや守り方が大きく変わります。逆に言えば、DXやデジタル化は、セキュリティ強化を一緒に推進する絶好のタイミングでもあります。新規投資の一部としてセキュリティ対策費用を組み込みやすく、経営層の理解も得やすい局面です。また、DXやデジタル化により業務効率がアップすれば、セキュリティ対応の時間を捻出できるようになるかもしれません。

「DXのついでにセキュリティも」ではなく、「DXだからこそセキュリティを」という意識で取り組むことで、目の前のハードルを越えられるかもしれません。

                                       

                                    

5. 対策で重視すべきは、機能や性能よりも「運用」

セキュリティ製品を導入したからといって、それで安心してはいけません。

たとえば、高機能な Endpoint Detection and Response(EDR)製品を導入したとしても、アラートを誰も確認していなかったりすれば、その製品は実質的に機能していないのと同じです。

「導入した=対策した」という認識は、セキュリティにおいては危険な誤解です。

無差別型攻撃は、いつ・どのような手口が使われるかを予測することが不可能です。だからこそ、「何が来ても対処できる状態」を維持し続けることが重要です。そのためには、次のような継続的な運用が欠かせません。

 

  • セキュリティパッチの適時適用
  • ウイルス対策ソフトの定義ファイル自動更新と更新状況の点検
  • 通信Log(ログ)の定期的な確認・分析
  • セキュリティ機器(UTM/IPS/IDS)のアラートへの対応フロー整備

 

運用できない対策を無理に導入しても、投資効果が得られないどころか、「使いこなせないから」という理由で対策そのものをやめてしまうことになりかねません。そうなると、セキュリティの弱体化につながり、かえってリスクが高まります。製品の機能・性能を評価することと同等に、「自社で継続して運用できるか」や「外部に運用を委託できるか」を選定基準の中心に置くことが、長期的に有効なセキュリティ体制を築く上での重要なポイントです。

                   

     

6. すぐできる対策で無差別攻撃への備えを

セキュリティ対策は、コストをかけなければできないわけではありません。身近なところから、今すぐ始められる対策があります。

【例】パスワード利用状況の確認

  • ルーターやNAS(Network Attached Storage)、IoT(Internet of Things)機器などが、初期パスワードのまま使われていたら、固有のパスワードに変更する。
  • 社内システムやサービスのアカウントが、共通のユーザ名・パスワードになっており、社員間で使い回されていたら、社員毎にユーザ名やパスワードを付与する。

 

これはいずれも、費用ゼロで・すぐに対応できる対策です。しかし、無差別型攻撃がよく悪用する「セキュリティの穴」でもあります。 どこかから漏えいしたユーザ名やパスワードを使って別のシステムにログインを試みるCredential Stuffing(クレデンシャル・スタッフィング)や、 パスワードが当たるまで文字列の組み合わせを変えてログインを試みるBrute Force Attack(ブルート・フォース・アタック/総当たり攻撃)は、まさにこうした弱いパスワードや使い回しのパスワードを標的とした無差別攻撃の代表例です。既知の手口に対して、基本的な管理を徹底していない企業は、攻撃が成功しやすい状況を自ら作り出してしまっています。

                                                   

                     

まとめ:基本を疎かにしないことが最大の防御

サイバー攻撃はもはや「大企業だけの問題」ではありません。無差別型攻撃は、今この瞬間にも業種・規模を問わず、あらゆる企業に向けて仕掛けられています。高度な攻撃への対策も重要ですが、既知の手口は基本的な対策の実行によって防げる可能性があるという事実を忘れないでください。最新鋭のセキュリティ製品を導入していても、基本が抜けていれば意味がありません。

まずは、社内の身近なところに「セキュリティの穴」がないかをチェックすることから始めてみてください。コストをかけず、手間をかけて作業するだけで低減できるリスクが、あなたの会社にもきっとあるはずです。

ぜひ、この記事をきっかけに、社内のセキュリティ状況を今一度見直してみてください。